睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome)は、その頭文字をとって、SAS(サス)とも呼ばれています。医学的には10秒以上の気流停止(気道の空気の流れが止まった状態)を無呼吸とし、無呼吸が一晩(7時間の睡眠中)に30回以上、もしくは1時間あたり5回以上あれば睡眠時無呼吸です。
寝ている間の無呼吸に私たちはなかなか気付くことができないために、検査・治療を受けていない多くの潜在患者がいると推計されています。
この病気が深刻なのは、寝ている間に生じる無呼吸が起きているときの私たちの活動に様々な影響を及ぼすこと。気付かないうちに日常生活に様々なリスクが生じる可能性があるのです。
■簡易検査でのSASの診断
「簡易検査器」は携帯型の検査機器を使って、自宅で普段と同じように寝ている間にできる検査です。手の指や前胸部にセンサーを付け、いびきや呼吸の状態から睡眠時無呼吸症候群(SAS)の可能性を調べます。
簡易検査の結果、睡眠時無呼吸症候群の疑いがあれば、確定診断するために専門の医療機関に1泊入院して、脳波や眼球運動までを調べる「終夜睡眠ポリソムノグラフィー(PSG)検査」が行われます(自宅で行える場合もあります)。
SASの重症度はAHI(Apnea Hypopnea Index、無呼吸低呼吸指数)で表します。
軽症:5≦AHI<15
中等症:15≦AHI<30
重症:30≦AHI
CPAPの適応40≦AHI
AHIが40以上で治療としてCPAP※)の適応が認められています。
※)CPAP:Continuous Positive Airway Pressure(経鼻的持続陽圧呼吸療法)。
検査後、このようなレポートが送られてきます。
以下のような症状がある場合は、ご相談ください。
起きているとき
・強い眠気がある
・だるさや倦怠感がある
・集中力が続かない
・いつも疲れている
起きたとき
・口が渇いている
・頭が痛い、ズキズキする
・熟睡感がない
・すっきり起きられない
・身体が重いと感じる
寝ている間
・いびきをかく
・いびきが止まり、大きな呼吸とともに再びいびきをかきはじめる
・呼吸が止まる
・呼吸が乱れる、息苦しさを感じる
・むせる
・何度も目が覚める(お手洗いに起きる)
・寝汗をかく
SASがもたらすリスク
■ 慢性期のリスク
起床時の頭痛、頭重・倦怠感、集中力・記憶力の低下、日中の眠気、交通事故、生産性の低下、作業ミスによる労働災害
■ 急性期のリスク
高血圧、糖尿病、心不全(30~40%はSASを合併しているといわれる)、 心血管障害、夜間突然死、脳梗塞、認知障害、発育不全(小児のSASでは、特に発育障害が問題となります。これは睡眠が障害されると、睡眠中に分泌される成長ホルモンの分泌が不足するためといわれています。呼吸が止まっていなくても、いびきをかいていることは、正常な呼吸とはいえません。)
SAS患者さんにおける高血圧は健常人の1.37倍(Neito FJ.JAMA2000;283;1829-1836)、夜間心臓突然死は健常人の2.61倍(Gami AS.N Engl J Med 2005;352;1206-1214)、脳卒中・脳梗塞は健常人の3.3倍高い(Yaggi HK et al,N Engl J Med 2005;353;2034)といわれています。
SASでは、酸欠状態になり、少ない酸素を全身にめぐらそうとして心臓や血管に負担がかかります。この状態が長い間続くと、様々な生活習慣病の合併症を引き起こす可能性があります。
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