道の新型コロナ対策 模索の3年間振り返る

2023年5月9日 23:33(5月10日 00:11更新)

 新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが季節性インフルエンザと同じ「5類」に変わり、道の感染対策も「有事」から「平時」に移行した。独自策を模索した1年目、国の動向や行動制限の影響を慎重に見極めるあまり後手に回ることもあった2年目、社会経済活動との両立に腐心した3年目と、道は難しい対応を迫られた。

■20年 独自の緊急宣言

 「まずは移行を円滑に進め、新たな感染症危機にも備えるなど柔軟かつ機動的に対応していく」。新型コロナが従来の「2類相当」から5類に変わった8日、鈴木直道知事は職員らを前に「コロナ後」への体制切り替えを指示した。

 これまで8回にわたり押し寄せた感染の波。第1波のピークは2020年2月27日だった。当時の日別の感染者数は15人に過ぎなかったが、知見の乏しい未知のウイルスに対し、知事はのちに「人生をかけた難しい決断」と振り返る道独自の緊急事態宣言を発表。一斉休校や週末の外出自粛を道民に求めた。

 法的根拠のない私権制限に否定的な見方も出たが、結果的に国の対応を先取りする形となった。政府は第2波の渦中の同年4月、特別措置法に基づく初の宣言を東京など7都府県に発令。知事は同年7月の北海道新聞のインタビューで独自の宣言について「国の判断を待つ方法もあったと思うが、北海道で感染が先行している状況で、具体的にどうしたらいいのかと悩んだ」と明かした。

 道のコロナ対策の有識者会議座長を務めた石井吉春・北大公共政策大学院客員教授も当時の道の対応について「国に先駆けて進める必要があり、行動制限はやむを得なかった」と評価する。

■21年 行動制限ためらう

 2年目は変異株との闘いとなった。アルファ株による21年3月からの「第4波」では病床が逼迫(ひっぱく)し札幌市で在宅死が発生。道民の危機感が高まる一方、知事は社会経済活動に大きな影響を与える行動制限をためらう場面が増えた。

 感染対策と社会経済活動の両立のモデルとなった飲食店の第三者認証制度も、全道での開始は同年10月と、国の検討要請から半年後にずれ込んだ。札幌市の秋元克広市長は「苦言を呈したい」と知事を名指しで批判。宣言やまん延防止等重点措置の要否を巡り、国、道、市町村の間で相違も見られた。政府の第33次地方制度調査会は道内外で得られたコロナ対応の教訓を踏まえ、国と自治体の感染症対策における役割分担を議論している。

 道内では当初、医療従事者の不足などを背景にワクチン接種も低調だった。道は道営の集団接種会場設置など態勢を強化し、徐々に改善。今月7日時点の3回目接種率は71%と全国平均(69%)を上回っている。

■22年 経済と両立腐心

 3年目の22年は感染力が格段に強いオミクロン株が主流となって保健所業務を圧迫。道や保健所設置市は感染経路を特定する「積極的疫学調査」の縮小を余儀なくされた。一方で、国や道は重症化リスクの低さを踏まえ、旅行助成事業の再開など社会経済活動の正常化を推進。夏の第7波、秋以降の第8波で日別の感染者が最多を更新する中、感染防止の呼び掛けにとどめ行動制限は取らなかった。

 道内の感染者数は8日発表分までの累計で136万人と都道府県別で9番目。死者数は計4610人と大阪府、東京都に次ぎ、多さが際立つ。札幌医科大の秋原志穂教授(感染看護学)は要因として、道内は65歳以上の高齢化率が32・5%と、全国平均より高い点に言及。その上で「都市部に病院が集中する道内の地域構造や、医療従事者に感染が相次いだことなどで生じた医療逼迫により、(高齢者らが)必要な治療を受けられなかった影響がある」との見方を示す。

 5類移行後は感染対策が個人判断となり、飲食店などではアクリル板や消毒液撤去の動きも見られる。秋原教授は「ウイルスはなくなったわけではない。高齢者は死亡リスクが高いということを頭に入れて、接する時は換気やマスク着用を心がけてほしい」と話す。(岩崎あんり、国乗敦子)


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しのろ駅前医院

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