片頭痛に画期的な鎮痛薬と予防薬 高い効果に患者「人生変わった」

2023年6月7日 05:00

 片頭痛治療で、全く新しいタイプの鎮痛薬と予防薬が相次いで登場している。片頭痛は頭痛に加え、吐き気、めまい、だるさなどがあり、重症化すると日常生活に支障を来すこともある。ただ、その苦痛は一般にあまり認知されていないため、詐病と誤解されることも多い。新しい鎮痛薬はこれまで服用できなかった人にも投与することが可能となったほか、予防薬は従来の薬と比べ、格段に効果が高くなっている。

 「頭痛治療にとって画期的な薬。症状が緩和して普通の生活を楽しむことができるようになった患者さんもいる」と話すのは、中村記念病院(札幌市中央区)副院長で、脳神経内科の佐光一也医師だ。

 片頭痛は国内に840万人の患者がいるとみられ、10~40代の有病率が高い。女性の有病率は男性の3倍とされ、これが女性の活躍を阻む要因の一つと指摘する声もある。

 過労や心身のストレス、天気の変化などで発症することが多く、発症前には光や音に過敏になったり、吐き気をもよおしたりすることがある。片頭痛の発作は4~72時間続くが、明確な原因は分かっていない。

 片頭痛治療は従来、痛みを生じる急性期には血管収縮作用のあるトリプタン系製剤が処方されてきた。ただ、使用しすぎると頭痛が悪化したり、慢性化することがあった。さらに薬効から脳梗塞や心筋梗塞などの疾患を抱える患者には使えなかった。

 それを大きく変えたのが2022年6月に発売された鎮痛薬「レイボー」だ。飲み薬で、片頭痛を起こす脳の神経に直接作用し、血管収縮作用がないため、これまで薬を使えなかった人も服用できる。

 一方、予防薬は21年に「エムガルティ」「アジョビ」「アイモビーグ」の3種が発売された。いずれも皮下注射で、当初は医療機関での接種だったが、昨年5月から患者自身が自宅で行うことが可能になった。

 化学的に合成された物質を元に造られる従来の医薬品に対し、3種はバイオ技術で生物がつくるタンパク質などの物質を使って製造される、生物学的製剤だ。がんやリウマチなどの治療薬としても使われていて、がん細胞などを分子レベルで狙い撃ちするため、分子標的薬とも言われる。片頭痛では脳の神経(三叉(さんさ)神経)から放出される神経伝達物質に結びつき、炎症や痛みを抑える働きをする。

 お笑いコンビ「オードリー」の若林正恭さんは21年5月に放送されたラジオの深夜番組で、「小学生のころからの頭痛の持ち主で、毎日薬を飲んでいる」と明かした上で、「エムガルティの注射を打ったところ、人生が変わった」と語り、その効果を絶賛している。

 3種はいずれも従来の片頭痛治療で効果がない人が対象で、18歳未満は適応外。予防効果を維持するため基本的に月に1回の注射が必要だが、価格は1回当たり3割負担でも1万円を超える。

 違いについて佐光副院長は「効果、副作用とも基本的には同じ。即効性やアレルギー体質、注射の痛みが苦手かどうかなどの違いを考慮して投与する」とし、「すべての人に効くわけではないが、新たな予防薬はこれまでのものと比べ格段に高い効果があるのも事実。こういう薬があることを知らない人も多い。片頭痛に悩んでいる人は、相談してほしい」と話している。(編集委員 荻野貴生)

北海道新聞よりシェアしました https://www.hokkaido-np.co.jp/article/857579/

しのろ駅前医院

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