介護施設 人材争奪戦 「特典」で若者つかめ

2024年2月21日 17:31(2月21日 17:58更新)


 介護業界を目指す若者が減る中、高齢者施設の人材獲得競争が激しさを増している。カフェのような職員休憩室や長期間のリフレッシュ休暇など多様な「特典」で人材の囲い込みを図る施設のほか、重労働という負のイメージを逆手に取り、筋肉自慢の人材を積極採用するユニークな施設も出てきた。求職者が優位な「売り手市場」は今後も続くとみられ、介護施設は利用者だけでなく、働き手からも厳しい目で選ばれる時代を迎えている。


入居者に優しい口調で語りかける静苑ホーム職員の鎌仲さん(右)


「もうすぐ晩ご飯ですね。みんなで食べましょう」。江別市の特別養護老人ホーム「静苑ホーム」のホールで職員の鎌仲奈々さん(27)は入居する90代女性に笑顔で語りかけた。

 新卒で就職して8年目。札幌の専門学校時代に介護実習で静苑ホームを訪れ、入居者と深い信頼関係を築いていた職員の姿にあこがれた。今では業務の傍ら、新人の指導や相談に当たるチューターもこなしており「頑張っている後輩を応援するのが楽しい」という。

■新卒採用が主体

 静苑ホームで働く介護士の正社員55人のうち50人は新卒採用で、今春も大学生や専門学校生ら6人を介護職として採用予定だ。慢性的な人手不足に直面する介護施設の多くは、人材育成に時間を要する新卒の採用を敬遠しがち。新卒採用を主体とする施設は珍しいという。

 静苑ホームは鎌仲さんのような先輩職員が新人を技術、精神両面で支えるチューター制度を導入し、積極的に新卒者を採用。処遇や福利厚生の改善を重ねて離職を抑え、安定的に人材を確保している。

静苑ホームの職員用休憩室で、仕事について語る職員の鎌仲さん 


職員の基本給は他施設と大差はないが、夜勤手当は1回5千円未満の施設もある中で2倍以上の1万円を支給。7年前に職員の休憩室を喫茶店風の内装に改装し、無料のドリンクバーも置く。全体のスケジュール調整で各職員が7連休以上のリフレッシュ休暇を毎年取れるようにもしている。

 介護労働安定センターが22年に実施した全国調査によると、介護施設で働く正職員の離職率は13.6%だった。離職者のうち勤続3年未満は58.6%に上る。これに対し同ホームの就職後10年間の離職率はわずか5%程度にとどまっており、市川茂春理事長は「若手職員が毎年入ってくることで、職員全体の意欲向上にもつながっている」と手応えを語る。

 介護業界の人材不足は顕著だ。道教委によると、23年度の介護系の専門学校12校の入学者は定員510人に対し220人(前年比48人減)で、充足率は43%だった。専門学校全体の65%より低い。

 昨年12月の道内の介護職の有効求人倍率は3.7倍で、全職種の1.04倍を大きく上回る。業界の人材争奪戦が厳しさを増す中、道外には変わった採用活動で注目される企業もある。

■筋トレ趣味に着目

 訪問介護や障害者のグループホームの事業を行う「ビジョナリー」(名古屋)は、筋肉トレーニングを趣味にした人材が集まる。

 ボディービル競技の実業団として7人を雇用しており、就業時間8時間中2時間を筋トレに充て、プロテイン購入のための手当てを月2万円支給している。実業団以外の社員も筋肉を鍛える人が多く、社員は提携するジムを無料で使える。

 同社がこうした採用を始めたのは6年前。23年度は採用枠90人に対し約600人が応募する人気ぶりだった。丹羽悠介社長(38)は「筋トレをしている人は力仕事で体を痛めにくく、利用者からも『頼りがいがある』と言われる。共通の趣味の人が集まるので職場の雰囲気も良い」と語る。同社は札幌市での事業展開も視野に入れている。

 介護業界を目指す学生を指導する北海道医療大の池森康裕講師は「学生は給与面だけでなく、ワークライフバランスや、自らの技術と知識を生かせる職場なのかを重視している」と指摘。若い世代を採用できる施設か否かで二極化が進む可能性があるとし「施設は人材を確保するため、交流サイト(SNS)や介護実習の受け入れを通じて学生との接点を持つことが大切」と話している。(高野渡)



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しのろ駅前医院

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