2024年5月30日 17:57(5月30日 20:38更新)
札幌市内の地場スーパーが、独自の販売戦略で存在感を示している。常連客をつなぎ留めるだけでなく、常に会計が1%引きになる電子マネーの導入や、交流サイト(SNS)による話題づくりなどで新たな顧客を開拓。道内大手による寡占化が進み、道外資本の格安店も攻勢を強めるなど食品スーパーの競争が激化する中、地域住民を引きつける「個性」で売り上げを伸ばしていきたい考えだ。
北区と東区に計2店を構えるマルコストアーは今月、電子マネー「マルコカード」のサービスを始めた。発行手数料は132円で、年会費は無料。専用カードに事前にチャージし、支払いで使えば、商品の本体価格が1%引きになる(一部商品は対象外)。
大手スーパーも独自の電子マネーを採用しているが、山川悟史社長は「特定の日だけでなく、常に割引となる電子マネーは珍しい。お得さを感じてもらいたい」と話す。
同社は1978年に設立。半径2キロ圏内にイトーヨーカ堂やアークス、北雄ラッキーが大型店を構える北区篠路の本店を、今月27日にリニューアルオープンした。主に地元の高齢者から支持され、経営は安定していたが、顧客層の拡大が課題で、電子マネーに加え新店舗の売り場づくりも工夫した。
新店舗は、老朽化が進んだ旧店舗を取り壊して建設。売り場面積は約260平方メートルから約800平方メートルに広げた。子どものいるファミリー層を意識し、菓子コーナーを拡充。一方で、店員との会話を楽しみたい常連客も多いことから、青果と鮮魚の売り場は、これまで通り「対面形式」にした。
新店舗建設中に、近くのヨーカドーが、格安食品スーパー「ロピア」を展開するOIC(オイシー)グループ(川崎)に譲渡されることが決まった。この影響などは見通せないが、山川社長は「常連客をこれまで通り大切にしながら、若年層も取り込みたい」と意欲的で、本店の売り上げを2倍にする目標を掲げている。
手稲区のキテネ食品館は、SNSを積極的に活用している。バターやインスタントラーメンなど日替わりの目玉商品を、話題を集めるよう通常の半額程度と大幅に安く価格設定し、2021年からインスタグラムやTik Tokなどで紹介。中高生など若い世代に注目されるようになった。
SNSの情報が口コミで親にも伝わったのか、家族連れの来店が増加。売り上げはこの3年、前年比で10%ずつ伸び続けている。資金に余裕が出たことから、初めての2号店を豊平区月寒に7月上旬に出店し、さらなる業績拡大を目指す。自らSNSを更新する中塚誠社長は「大手が絶対にまねできない、小さいからこそ勝てる戦い方がある」と話す。
スーパーエース(東区)は、同区の美香保店を、新業態の「ARSPA(アレスパ)美香保店」として2月にリニューアル。米国資本の会員制スーパー「コストコ」の商品を販売し、スーパーでは珍しい鹿肉を扱うなど、商品構成で周辺の大手スーパーとの差異化を図った。改装後の売り上げは前年比20%増で、瓜谷健一店長は「お客さんに楽しんでもらえる店づくりを続けたい」と意気込んでいる。
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