2023年7月7日 05:00
夏本番を迎えて気温が高くなると、気をつけたいのが食中毒。嘔吐(おうと)や下痢などの症状が出るだけでなく、重症化すると命の危険につながる可能性もある。専門家は「夏に特に注意が必要なのは、細菌が原因の食中毒。予防の徹底が大事」と呼びかけている。
■しっかり加熱 耐性に応じ対策を
道内各保健所は6月下旬になって、1日の最高気温が28度以上と予想されるなどとして、食中毒警報を相次いで発令した。札幌管区気象台によると今月9日ごろから約5日間、道内全域で平均気温が平年を上回る見通しで、食中毒への警戒が必要だ。
食中毒の原因には細菌やウイルス、自然毒、寄生虫などがある。道立衛生研究所(札幌)感染症部細菌グループ主査の大野祐太さん(35)は「細菌の多くは高温多湿を好み、人の体温と同程度の温度で菌の増殖が速くなる」と説明する。
夏の食中毒の原因菌として、大野さんが「特に気を付けてほしい」と挙げるのは▽サルモネラ属菌▽黄色ブドウ球菌▽腸管出血性大腸菌▽セレウス菌=グラフィック(1)=。食中毒の予防には「細菌を『付けない』『増やさない』『やっつける』といった3原則が重要」と強調する=グラフィック(2)=。
サルモネラ属菌の主な原因食品は鶏や豚などの食肉。熱に弱いため、中心部までしっかり加熱する。
黄色ブドウ球菌は動物のほか、人の鼻や髪の毛などにもいる菌で、手の傷などが化膿(かのう)した所に多く存在する。菌は手や指から付きやすく、おにぎりや弁当などが原因になる。食品の中で増殖して毒素を作り、その毒素は熱や塩分に強い。おにぎりを作る際はラップや手袋を使い、調理後は低温で保管する。「焼きおにぎりにしても毒素は壊れず、塩や梅干しを使っても殺菌作用は期待できない」
O157に代表される腸管出血性大腸菌は、家畜の腸管内にいる菌で感染力が強く、重症化する可能性がある。熱に弱く、十分加熱すると予防できる。ひき肉を使ったハンバーグなどは半分に切り、均一にしっかり加熱できているかどうかを確認すると良い。
セレウス菌の原因食品は米飯類や麺類など。大野さんは「菌は熱に強く、増やさない対策が大切」とし、大量調理を避ける、調理後はできるだけ早く食べる、小分けして急速に冷やして保存するよう助言する。
このほか、大野さんは、自然界に多くあるウエルシュ菌、鶏や牛などの腸管内にいるカンピロバクターへの注意も促す。ウエルシュ菌は熱に強く酸素を嫌うため、調理の際にしっかりかき混ぜて空気を入れ、できるだけ早く食べ、保存する場合は小分けして急速に冷やす。カンピロバクターは熱に弱く、十分な加熱が欠かせない。大野さんは「細菌の特徴を知ると、対策を取りやすい」と話している。(熊谷知喜)
北海道新聞よりシェアしました https://www.hokkaido-np.co.jp/article/873859/
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