2023年7月14日 05:00
乳幼児がかかりやすい「夏風邪」と呼ばれる感染症がある。口の中に発疹が出るヘルパンギーナと手足口病、目が充血し痛む咽頭結膜熱の三つが代表的だ。今年の道内はヘルパンギーナの流行が7年ぶりの規模となっている。いずれものどが痛むが、炎症や発疹などの状態が異なる。それぞれの症状をまとめ、看病の仕方を小児科医に聞いた。
■発熱、のどの痛み、水疱…脱水症状防いで
国立感染症研究所によると、ヘルパンギーナと咽頭結膜熱は発熱から始まることが多い。
ヘルパンギーナは発熱に続いて口の奥、口蓋垂(こうがいすい)(俗称・のどちんこ)のまわりに水疱(すいほう)性の発疹ができる。2~4日で熱は下がり、その後に発疹も治まる。発熱時に熱性けいれんを起こすことがあるので注意が必要だ。
咽頭結膜熱はのどが赤く腫れて痛む。特徴的な症状は結膜炎で3~5日間続く。一般的に片方の目から充血や痛みが始まって、もう片方の目も炎症を起こす。
手足口病は病名通り、唇の裏や舌、手のひら、足の裏に水疱性の発疹が出て、3~7日で消える。発熱する患者は3分の1ほどで、ほとんどが38度以下だ。
ヘルパンギーナと手足口病は主にエンテロウイルスが原因で、まれに髄膜炎など重症化することがある。嘔吐(おうと)や激しい頭痛、ぐったりしている、手足口病で発熱が2日間以上続くといった症状があれば医療機関を受診することが望ましい。
一般的にこの三つは、いずれも自然に治る。治療薬はなく、必要があれば解熱剤で熱や痛みを抑える。口やのどの痛みで子どもが飲食を嫌がることが多いため、脱水症状を防ぐことが重要だ。北海道小児科医会長を務める土田こどもクリニック(旭川)の土田晃院長(67)は「苦みや塩気がある食べ物はしみるので避け、アイスクリームや豆腐、冷ましたおじややグラタンが良い。オレンジジュースは酸味があるので避けて」と話す。
同クリニックでは6月初旬からヘルパンギーナの患者が増え、下旬には1日10人ほどが来院。脱水症状や熱性けいれんを起こした子もいた。咽頭結膜熱は2、3日に1人、手足口病は1日1人程度で、流行期はこれから。「今年は旭川でヘルパンギーナの重症化は聞いていないが、水分が取れない、高熱が続く時などは受診して」と呼び掛ける。北海道小児科医会は、発熱時の受診の目安などをまとめたハンドブック「こどもの急病」をホームページに掲載している。
飛沫(ひまつ)や接触で感染が広がるため、こまめなうがい手洗いが欠かせない。ヘルパンギーナと手足口病は、症状が治まってから1カ月近く便からウイルスが排せつされる。大人もかかることがあり、おむつ交換後の手洗いは念入りに。新型コロナウイルスは感染症法上の位置付けが5類となったが、感染対策は継続したい。
保育・幼稚園へは、咽頭結膜熱の場合、学校保健安全法などにより症状が消えて2日経過するまで原則出席停止とされている。ヘルパンギーナと手足口病は、自治体や園により登園の目安が示されていることが多い。(山田芳祥子)
■道内感染状況 警報レベルも
北海道感染症情報センター(札幌)によると、道内の定点医療機関1カ所当たりのヘルパンギーナの患者は、直近1週間(6月26日~7月2日)は6・01人で2016年以来の水準となっている。道内8保健所管内で警報レベル(6・00人)を超え、小樽市保健所管内は18・67人、北見保健所管内は17・25人だ。咽頭結膜熱は道内は0・95人だが、小樽市、紋別の両保健所管内は3・33人で警報レベル(3・00人)を超えている。手足口病は道内で0・23人となっている。
北海道新聞よりシェアしました https://www.hokkaido-np.co.jp/article/877383/
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