<興味深人 インタビュー>DX化、働き方改革を推進 札幌美しが丘脳神経外科病院理事長・高橋明さん

2024年2月18日 5:00

 デジタル技術を活用して業務効率化やサービス向上につなげるデジタルトランスフォーメーション(DX)化と、働きやすい職場環境を目指す働き方改革は、医療現場でも喫緊の課題だ。札幌美しが丘脳神経外科病院(清田区)を運営する医療法人美脳の高橋明理事長(60)は、4年前の開院当初からDX化と働き方改革に力を入れている。具体的な取り組みやその思いを聞いた。

■専門業務で力発揮 医療サービス向上に

 ――なぜ、医療分野でDX化や働き方改革が必要なのですか。

 「業界や業種を問わず人材不足が叫ばれる中、業務効率化や働きやすい環境づくりをしなければ、選ばれる職業、職場になりません。医師や看護師、リハビリテーションの専門職(リハ職)らが、それぞれの専門業務でより力を発揮できる仕組みも必要。こうした体制や環境は、患者に提供する医療サービスの向上につながります」

 ――DX化をどのように進めていますか。

 「電子カルテはもちろん、職員がいつでもどこでも内線と外線の電話やメールを利用できるようにスマートフォンを取り入れました。情報通信技術(ICT)を活用して患者の情報や職員の出退勤、備品の管理などを行える院内の情報共有システムも導入。人工知能(AI)を搭載した磁気共鳴画像装置(MRI)やコンピューター断層撮影装置(CT)などもそろえています」

 ――現場での活用方法は。

 「救急患者の受け入れは一分一秒を争います。スマホで、救急隊から届いた患者の情報を院内の関係者に一斉に送って共有できるので、受け入れ態勢を迅速に整えて検査や治療を行えます。カルテの音声入力にも対応しており、例えばリハ職は患者の歩行訓練を指導しながら、歩行状態や歩いた距離などを音声で入力。両手がふさがっていても、記録が可能です」

 ――今後のDX化の予定は。

 「現在、患者のネームタグにQRコードを付け、スマホで読み取ると歩行状態や対応の留意点を把握できます。さらに4月以降は、服用している薬も読み取るようにする予定です。医療事故を防ぐには、さまざまな情報や確認が必要。職員の手元でできれば、作業の負担が軽減されます。業務の無駄を省き、課題があれば解決策を検討して、積極的にDXの機能を充実させたい」

 ――働き方改革の具体的な内容は。

 「1年ほど前から臨床工学技士とリハ職を対象に、通常の週休2日制以外に週休3日制を加えました。職員の希望に応じて選択できます。週休3日はうれしいけれど、給与が下がるのは避けたいという声を踏まえ、週の勤務時間は変えず、1日の勤務時間を延ばして給与が変わらないよう調整しています。勤務時間は長くなりますが、職員からは専門知識を深める時間に充てられるといった声が出ています」

 ――週休3日制を他の職種に広げる考えは。

 「もちろんあります。ただ、勤務時間が日勤帯の職種だと比較的導入しやすいのですが、夜勤のある職種はシフトの調整が難しい。現在、看護師は週休3日制の導入に向けてシフトをシミュレーションしています。一方、子育て中の職員は1日の勤務時間が長くなると、週休3日制を選びたくても選べないというのが現状。1日の勤務時間は変えず、週休3日制を実施できないか検討中です。家族の状況やライフスタイルに合わせ、多様な働き方ができる環境を整えたい」

 ――他にどんな働き方改革を進めていますか。

 「電子カルテの入力や診断書の作成など医師の事務作業を手伝う医師事務作業補助者(医療クラーク)を配置していますが、この仕組みを他の医療職にも広げるため、『ホスピタルアシスタント』として独自に採用しています。今は3人のほか、事務職と兼務で1人配置しています」

 ――ホスピタルアシスタントの役割は。

 「看護師の代わりに、入院患者の情報を電子カルテに入力したり、薬剤師が準備した点滴をナースステーションに運んだり、さまざまな仕事を担っています。働く中で、医療職に興味を持ち、資格を取得したいと望む人が出てきたら、バックアップしたいと考えています」

 ――今後の運営方針は。

 「医師や看護師、リハ職など専門資格や役割は異なっても、誰もがチームの一員と考えて病院として進化し続けたい」(文・熊谷知喜、写真・野沢俊介)


北海道新聞よりシェアしました https://www.hokkaido-np.co.jp/article/976578/

しのろ駅前医院

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