2024年9月27日 12:00(9月27日 20:57更新)
特許切れの先発医薬品を希望する患者の窓口負担を増やすことで、後発品(ジェネリック)の利用を促進する国の新制度が10月1日から始まる。先発薬と同じ効能・効果がある上、より安価なジェネリックへの転換を図ることで医療費を抑制する狙いだが、新たな制度に対する患者の理解は広がっていない。ジェネリックの供給不足も慢性化しており、薬局などでは混乱も予想される。
「患者さんに理解してもらうことが最も大変」。札幌市中央区のアスティ45薬局の管理薬剤師、野木裕司さん(46)は新制度への懸念を募らせる。薬局内には厚生労働省が作成した新制度を説明するチラシを掲示しているが「患者への周知が進んでいない」と肌で感じる。
先発薬を常用する患者に新制度を説明しても「薬局がもうけるためか」と誤解されることもある。同薬局で糖尿病の薬の処方を受ける札幌市中央区の主婦(79)は「できれば今のままの(先発)薬を飲み続けたいが、物価高の中でさらに負担が増えるのは大変だ」と困惑を隠せない。
医療費は現在、患者の窓口負担(1~3割)と保険料、国費などでまかなわれている。新制度では先発薬とジェネリックの差額の4分の1を保険適用外とし、窓口負担に上乗せする。政府はこれによって抑制できた医療費の一部を新薬開発支援に充てる方針だ。
対象はアトピー性皮膚炎などの治療に使われる保湿用塗り薬の「ヒルドイド」やインフルエンザの治療薬「タミフル」など1095品目。医師の判断で先発薬を処方する場合などは対象外となる。
北海道薬剤師会の藤堂直樹常務理事(57)は「薬剤師会として厚労省からの通知を各薬局に送っているが、より丁寧な周知が必要。負担が増える分は複雑な計算が必要で、患者さんがすぐに理解できるかは分からない。課題は山積している」と気をもむ。
先行き不安に追い打ちをかけるのは、ジェネリックを含めた医薬品の供給不足だ。背景には2020年以降に大手製薬会社で相次ぎ不正が発覚し、複数のメーカーが業務停止処分を受け、ジェネリックの供給が滞った事情がある。現在も2割超の医薬品が入手困難な状態が続いており、在庫の安定までに少なくとも2、3年はかかる見通しという。
国は10月以降も、薬局にジェネリックの在庫がない場合は先発薬でも従来通りの窓口負担額とする方針だが「前回は高くて今回は安いなどバラツキがあるのは混乱に拍車をかける」(道央の薬剤師)との指摘は絶えない。
北海道医療大の塚本容子教授(公衆衛生)は、ジェネリックは国の医療費と合わせて患者の負担も抑えられるため「必要な制度ではある」と説明。「国、医療機関、薬局は連携して制度の周知を進め、患者自身も新制度開始を機に医薬品に関する知識を高める必要がある」と訴える。
北海道新聞よりシェアしました https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1066801/
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