2025年1月6日 4:00
スマートフォンやパソコンの利用に欠かせないのがIDやパスワードだ。安全上、利用者本人以外には知られないようにするのが大切だが、本人が亡くなってしまうと、パスワードの先にある情報に遺族がアクセスできなくなってしまう。デジタル機器の利用が高齢者にも定着している今、万が一の際に残された人が困らないようIDやパスワードを整理する「デジタル終活」が重要になっている。
金銭的な影響が大きいのは、預けたお金が利用できない場合と、口座から引き落とされるのを止められない場合だ。国民生活センターには、パスワードなどが分からずに困った遺族からの相談が寄せられるようになっている。
<事例1>弟が急死。「コード決済サービスに数万円入金したが使っていない」と聞いていたため、事業者に問い合わせ。指示に従って必要書類を送付したが、1カ月たっても残高がいくらあるのかの回答もない。(50代女性)
<事例2>亡くなった兄が生前にネット銀行に口座を開設。契約先確認のため、携帯電話会社にスマホの画面ロック解除を依頼したが「初期化はできるが解除はできない」と言われた。(60代男性)
<事例3>夫が死亡。クレジットカード明細に千円程度の不明な請求がある。一定金額の定期的な支払いでサービスが利用できるサブスクリプション(サブスク)契約らしく、業者に問い合わせると「IDとパスワードが分からなければ、すぐには解約できない」と言われた。(80代女性)
コード決済は「ペイペイ」や「d払い」など。口座やカードから直接引き落とす方法と、事前に一定金額をチャージしておく方法とがある。
同センターは事例1、2について「ネット上の資産は本人以外が実態を把握することが難しく、実店舗がない場合、郵送によるやりとりで相続手続きに時間がかかることがある」とする。事例3については「サブスクは解約しない限り請求が続く。事業者は契約者死亡の事実を知る手段がないので、相続人らが手続きをする必要がある」と指摘する。
総務省が2023年に行った通信利用動向調査によると、20~60代で9割以上、70代で7割近く、80歳以上でも4割近くがインターネットを利用。端末はいずれの年代でもスマートフォンが最も多かった。同センターは「今後、こうした相談が増えてくる」と予想。次の四つの対策を推奨する。
①名刺大の紙にパスワードなどを記入し、修正テープを2、3回重ね塗りして保管する。遺族がコインなどで修正テープを削れば見られる。誰かが削れば気付くので、パスワードを修正できる。
②契約しているサービスを把握し、IDやパスワードを整理しておく。オンライン契約は書面がメールなどで交付されるケースがあり、遺族が簡単に見つけられない。
③法務省がネット上で無料公開しているエンディングノートを印刷し、IDやパスワードを書いておく。
④スマホなどのアカウント保有者が亡くなった場合に別の誰かがアクセスできるようにするサービスを使う。スマホソフト事業者(Apple、Google)が提供しており、スマホの設定変更やネット上で登録できる。
道内各地で高齢者のスマホ教室を開く北海道消費者協会デジタル推進・組織連携関連担当部長の道高真理さんは「交流サイト(SNS)はそのままにしておくと乗っ取られて詐欺に使われたりするので、遺族は使わないなら削除を。スマホは各種手続きに必要なので、すぐには解約しないで」と呼びかけている。
北海道新聞よりシェアしました https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1106192/
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