<介護保険25年>デイサービス倒産相次ぐ 食事や入浴の経費高騰 人材不足も深刻

2025年1月8日 4:00


 通所介護(デイサービス)事業所の経営が厳しさを増している。東京商工リサーチによると、昨年1~10月の通所・短期入所介護の倒産は48件と、訪問介護に次いで2番目に多く、道内でも廃業や休止が相次ぐ。慢性的な人手不足や物価、燃料高が影響しているとみられる。専門家は、人材確保が難しい小規模事業所を中心に今後淘汰(とうた)が進む可能性を指摘する。

 同社のまとめでは、昨年1~10月の介護事業者全体の倒産件数は過去最多の145件。訪問介護の72件が最も多かった。道内では、通所・短期入所介護の倒産は3件で、過去最多の2022年の4件に迫っている。

 厚生労働省による介護事業所の経営実態調査では、22年度の通所介護の利益率(収支差率)は1.5%と、全業態平均を0.9ポイント下回った。福祉医療機構が運営する「ワムネット」による22年度の通所介護の経営状況レポートでも、赤字事業所の割合は調査した5744事業所のうち、49.6%と半数近くを占めた。

 士別市の「デイサービスハウスこもれ陽」(定員10人)は昨年12月末で休止した。08年の開設当初は稼働率80~90%だったが、徐々に利用者が減り、昨年11月は20%に落ち込んだ。施設を運営する合同会社コモウェルフェアサポートの山下達也代表(64)は「慢性的な職員不足の上、利用者も減ると事業を続けられない」と打ち明ける。

 こもれ陽の利用者はほかの施設に引き継いだ。市内にはほかに通所介護事業所が6施設あり、現状不足する状況にはないが、こもれ陽の主任介護支援専門員、山下昌江さん(59)は今後休止施設が増えれば、「利用者は望むサービスが受けられず、体力が低下したり気力がなくなったりして、家にこもりがちになりかねない」と懸念する。

 北海道デイサービスセンター協議会(札幌)会長の岸田喜幸さん(53)によると、一般的にデイサービスは夜勤がなく、業界では比較的人材が集まりやすい上、空き店舗を改装して開業できるため民間の新規参入が相次ぎ、道内の事業所数は00年以降、右肩上がりで増加した。だが、15年度の介護報酬改定で、利益率が高いことを理由に、報酬が大幅に引き下げられ、以後、事業所数は1600台で推移する。

 小樽商科大ビジネススクール講師で介護分野の経営コンサルタントの斎藤直路さん(41)=東京在住=は15年度の介護報酬改定で、認知症加算や中重度者ケア体制加算が新設され、そうした体制を整えた事業所が評価され「質が求められるようになり、経営の難易度が上がった」と指摘する。

 さらに、現在の経営悪化の要因として、同協議会の岸田さんは人材不足と経費の高騰を挙げる。全国社会福祉協議会が運営する中央福祉人材センターによると、通所介護を含む「高齢者(介護保険施設以外)」の有効求人倍率は昨年10月時点で7.66倍。厚労省による全職種平均の1.16倍を大きく上回る。

 全国老人福祉施設協議会(全国老施協)などが昨夏に行った調査では、通所介護など「在宅系サービス事業所」の電気、燃料、食事にかかる経費は22年度に比べ10%前後上がった。通所介護では食事や入浴サービスを提供するところが多く、物価高騰の影響は大きいという。

 事業所の経営悪化を受け、全国老施協は22年から相談支援事業を実施。道内では2事業所が、経営コンサルの助言を受けて利用者を増やし加算も取得するなどして、介護報酬を2~4割増やした。全国老施協のデイサービスセンター部会長の波潟幸敏さん(61)=上川管内鷹栖町=は、経営改善には「利用者のニーズに応え、価値を創造できる事業所を目指すことが大切」と話す。全国には、弁当屋を併設し、デイサービスの利用者が働く場をつくるなど多様なサービスを提供することで利用者増につなげるケースもあるという。

 経営コンサルの斎藤さんは、人材難や物価高により「特に地方で事業所が減少する可能性がある」と指摘。生き残り策として事業所の大規模化や他事業所との連携、介護保険外の事業運営などを提案する。一方、通所介護に限らず業界全体が苦境にあるとし、国や自治体、事業者や住民も含め「地域全体が持続可能な介護サービスのあり方を考えることが大切」と話している。


北海道新聞よりシェアしました  https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1108430/

しのろ駅前医院

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