2025年1月16日 18:30
インフルエンザが猛威を振るっている。特に幼児はけいれんや意識障害などの神経症状が現れ、生死に関わる危険性もある「インフルエンザ脳症」を合併しやすい。注意するポイントを専門家に聞いた。
インフルエンザウイルスは炎症を強く引き起こすため、免疫や脳を守る機能が未熟な小さな子どもは脳に影響が出やすく、脳症を発症するリスクが高い。厚生労働省の研究班が2017年に行った全国調査では、予後に死亡する割合は全体の6%。後遺症がなく回復するのは同71%、後遺症が残るのは同21%だった。
■今シーズンはすでに6例
インフルエンザ脳症は全国で毎年200例前後の届け出があり、死亡例も毎年10例ほどある。道立衛生研究所によると、道内でも毎年10例ほどの患者が報告されており、今シーズンの届け出は6例(1月6日時点)。発症年齢は4歳以下が4人、5~9歳が1人、10代が1人だった。
札幌医科大付属病院は昨年12月から、インフルエンザ脳症の子どもの入院を3例受け入れた。「視線が合わず意思疎通ができない」といった意識障害で他の医療機関から運ばれてくることもあり、状態によっては集中治療室(ICU)で治療することになる。
同大小児科学講座の福村忍准教授は「昨年12月に急激にインフルエンザの流行が拡大したことに伴い、例年より脳症患者も多いと感じる」と危惧する。
症状はけいれんや意識障害、異常行動など。福村准教授によると、こうした神経症状は発熱後24~48時間以内に起こることが多く、子どもを一人にせず、大人が観察することが重要だ。
ただ、インフルエンザはそもそも神経症状を起こしやすく、軽度の脳症と「熱せん妄」との境界は区別がつきにくいため、福村准教授は「最初の神経症状が出た時点で受診を」と呼び掛ける。厚労省のガイドライン(09年)でも、実際より重く診断したとしても「インフルエンザ脳症の重症度と早期治療により予後を改善できる可能性を鑑みれば、許容できる」としている。
■意識障害あれば受診を
その上で、福村准教授は受診の目安を以下のように説明する。
意識障害は「呼びかけ、痛み刺激に反応しない」重度のものから「親と視線が合わない」といった軽度のものでも脳症の可能性があるため、すぐに受診する。異常行動がなく意識障害だけの脳症患者も多い。
異常行動は「存在しないものが見える」など=表=。「トイレではないところで尿便をしようとする」例も多く見られる。医療機関で観察後、大丈夫と言われても異常行動が何回も続いたり、徐々に意識状態が悪化したりする場合は脳症のサインが疑われるので、ためらわず再度受診する。
けいれんは5分以上続くようであれば救急車を呼ぶ。5分未満でも脳症の可能性はあるため、意識障害を合併したり、けいれん後に意識がはっきりしない場合は早急に受診する。
まれに、解熱後いったん症状がよくなった数日後に再びけいれんや意識障害が出る「けいれん重積型脳症」という類型になることがあり、しばらくは注意が必要という。脳症を繰り返したり、きょうだいで発症することもまれにある。
■脳症リスク高める薬も
また、解熱剤はアセトアミノフェン(カロナール)など医師から処方されたものを使う。アスピリンやジクロフェナクナトリウムが含まれた薬は脳症のリスクが高くなるので使わない。
インフルエンザ脳症の死亡率は、1990年代の30%から大きく改善した。脳症リスクの研究や治療の進歩、予防接種の接種率増加などが背景にあると推測される。札医大病院で過去5年に入院となった7例の脳症患者は全員がワクチン未接種だったという。
福村准教授は「まずはインフルエンザにかからないよう、うがい手洗いを徹底し、予防接種もできるだけ打ってほしい」と呼びかけている。
北海道新聞よりシェアしました https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1111336/?ref=top
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