2024年7月17日 4:00
風が吹いただけでも〝痛い〟と言われる痛風は、汗をかきやすい夏に発症することが多い。厚生労働省によると、国内の痛風患者数は125万人で、9割が男性だ。かつてはプリン体の摂取が諸悪の根源とされ、治療もそれを控えることを主眼としてきたが、近年はカロリー制限に重きが置かれている。痛風の発作が起きたら何科を受診すべきなのか。知られざる昨今の痛風事情を探った。
「痛風の診断は難しく、実は関節リウマチなど他の疾患だったということもある。どの薬を投与すべきかなど医師の中でも情報が錯綜(さくそう)しており、患者に合わせたオーダーメード治療が必要」と話すのは、日本リウマチ学会専門医・指導医で、「さっぽろ内科・リウマチ膠原(こうげん)病クリニック」(札幌市北区)の近祐次郎院長だ。
痛風は血液中に溶けきれなかった尿酸が結晶化したものが、関節などに蓄積して炎症を引き起こす。血液の流れが弱く、冷えやすい親指の付け根に結晶がたまりやすく、歩けないほどの痛みを感じる。結晶は体中に沈着し、腎臓や心臓、血管にまで影響を及ぼすこともある。
治療はまず痛みを抑える消炎鎮痛剤を使う。適応薬は4種類あり、最も使われているのが即効性や容量の増減が容易な「ナイキサン」。同じメカニズムの「ロキソニン」や「ボルタレン」が処方されることもある。近院長は「痛風発作が起きている時に尿酸を下げる薬は通常、使わない。高尿酸血症の治療は痛風の炎症が消失した後に行うのがセオリー」と指摘する。
尿酸値が7.0ミリグラム/デシリットル以上になると高尿酸血症となるが、すぐには治療の対象とはならない。尿酸値が高いからといって痛風発作が起きるわけではないからだ。薬による治療対象は①痛風発作を起こしたことがある、または痛風結節がある②尿酸値が9.0ミリグラム/デシリットル以上③尿酸値が8.0ミリグラム/デシリットル以上で合併症(腎障害、尿路結石、高血圧、虚血性心疾患、糖尿病など)がある人だ。
治療で使われる内服薬は尿酸生成抑制薬(3種類)と、尿酸排出促進薬(4種類)がある。一般的には1日1回の服用でいい尿酸生成抑制薬の「フェブリク」が使われることが多い。それでも効果がない場合は尿酸排出促進薬の「ユリス」が併用される。2020年に発売されたもので、従来薬のような副作用がないのが特徴だ。
なお、尿酸値を下げる薬を服用していて痛風発作が起きた場合は、消炎鎮痛剤と同時に服用してもいい。
服薬は長期に行う必要がある。近院長は「尿酸値が正常値まで下がった、痛風発作が起きていない、と勝手に判断して服薬をやめると再発する可能性がある。尿酸ナトリウム結晶は溶けるまで時間がかかるためで、尿酸値が6.0ミリグラム/デシリットル以下の状態が2年ほど維持できれば、薬をやめてもいい」と解説する。
■アルカリ性食品摂取を
痛風は、行動的で仕事をばりばりこなし、食事も早食い・大食いで、ストレスにさらされやすい人が発症しやすいと言われている。
過去には尿酸が増える原因となるプリン体の制限が治療の1番だったが、近年は体重のコントロールに重きが置かれている。プリン体は「取り過ぎに注意」との位置づけとなり、併せて野菜、海藻、牛乳などアルカリ性食品の積極的な摂取が求められている。
痛風の発作予防には、リラックスしたり、早歩きなどの軽い有酸素運動が良く、過度な筋肉トレーニングや肩で息つくような激しい運動は禁忌。
発作が起きた時は、患部を心臓より高くして冷やす。温めたり、もんだりするのは逆効果で、歩き回るのも禁物だ。
痛風は足や膝、手首に痛みが生じるため、整形外科を受診する人が多い。ただ、腎臓をはじめとした各種臓器に影響していることがあるため、リウマチの専門医や循環器系の内科医を受診するのが望ましいとされている。医療機関のホームページに痛風治療の記載があれば、積極的に診ているかどうかが分かる。
北海道新聞よりシェアしました https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1038383/
0コメント