仕事効率化 「集中」が鍵 札幌生まれの精神科医・樺沢紫苑さんに聞く

2024年7月22日 4:00

 「思うように仕事がはかどらない」と悩むことはないだろうか。脳科学への知見をもとに、著作で仕事術などを発信する札幌生まれの精神科医・樺沢紫苑(しおん)さん(58)は「集中力の高まる時間」を上手に活用するよう勧める。仕事を効率的にこなし、余暇の時間を生み出すこつを聞いた。


■朝は「黄金時間」

 効率的に仕事をする最大のこつは「集中力の高まる時間に、集中を必要とする仕事をすること」と樺沢さん。特に起床後の2~3時間は「脳のゴールデンタイム」だ。眠っている間に脳内の情報が整理されるため、すっきりとした状態で集中力が高まるという。

 集中を必要とする仕事は、例えば「文章を書く」「プレゼンテーションの資料を作成する」など。決算書など、1円でも間違えてはならないような重要な書類作りも含まれる。出社後はまずメールチェックなどをしたくなるが、可能なら他の時間帯に回す。「大変な仕事は後回しにせず、朝いちで取り組むのがお勧めです」。朝が苦手な人は、熱めのシャワーを浴びたり、カーテンを開けて就寝すると心身が目覚めやすいという。

 終業間際の時間帯も、集中力が高まる。追い込まれた時に分泌される脳内物質「ノルアドレナリン」の影響で脳が覚醒し、集中しやすくなる。「仕事が終わったら帰ろう」と考えていると、この物質は分泌されないため「『○時に帰る』と、締め切りをきちんと決めることが大切」と話す。

■四つの雑念排除

 集中して仕事をするには、雑念を取り除くのも重要になる。樺沢さんは雑念を「物」「思考」「人」「通信」の四つに分類する。

 「物」の雑念は、机の上に散らばった資料などを指す。物が目に入るたび「そういえば、あの仕事がまだ途中だった」などの考えが浮かび、集中を妨げる。「集中は一度途切れると、戻るのに15分かかると言われます」。仕事に必要な資料や文房具を探す時間も集中を途切れさせるので、整理整頓はやはり大切なようだ。

 「思考」の雑念とは、「○○さんへのメールを忘れていた」「会議室を予約しなくちゃ」などの思考が頭をよぎること。今やっている仕事を中断し、他の仕事をしたい衝動に駆られてしまう。この場合は、メモに書いて目に付くところに貼っておく。「紙に書き出すと、脳はそれを『完了した仕事』と認識するため、それ以上は集中を妨げません」

 「人」「通信」の雑念は、周囲に話しかけられたり、電話が鳴ったりすること。適度な雑談は、情緒を安定させる作用を持つ「オキシトシン」を分泌させる効果もあるが、「集中して仕事を進めたい時は、場所を変えると良い」と勧める。「空いている会議室やカフェに1人で『缶詰』になると、さまざまな雑念から解放されます」。場所を変えると、記憶をつかさどる脳の器官「海馬」が活性化し、記憶力が高まる効果も得られるという。

■目つぶり休んで

 「脳の集中には波がある」と樺沢さん。集中できる時間は、作業の濃さにより「15分・45分・90分」が目安になる。同時通訳のような高い集中を要する仕事は、15分交代で行われる一方、学校の授業は45分が1単位。睡眠のサイクルは約90分だ。「脳にはリズムがあることを意識し、疲れる前に休息を取ると良いでしょう」

 休息時に注意したいのは、スマホを使い続けないこと。「脳は光る物を見ると興奮する特性があるため、脳が休まらない」という。休息後の仕事の効率を高めるには、スマホの使用は最小限にとどめる。

 可能なら仮眠を取ったり、瞑想(めいそう)をしたりすると効果的。「脳は視覚から入る情報の処理に能力の9割を使っていると言われます。しばらく目をつぶり、視覚情報を遮断するだけでも、脳は休まります」。仕事の合間にトイレや売店まで少し歩いたり、日光を浴びたりすることでも、癒やし物質「セロトニン」が脳内に分泌され、疲れは軽減するという。

 集中して仕事を済ませると、自由な時間が生まれる。樺沢さんは、その時間をさらに仕事に充てると、心身の病気になる可能性が高くなるとして「生活には緩急が必要です。できた時間は遊びや自己投資に充て、豊かな人生を楽しんでほしい」と話している。

 <略歴>札幌生まれ。札幌医大医学部卒。札幌や旭川の病院に勤務した後、米国留学を経て樺沢心理学研究所(東京)を設立。著作や動画配信サイトを通じ、メンタル疾患予防につながる情報などを発信している。「神・時間術」(大和書房)、「アウトプット大全」(サンクチュアリ出版)など著書多数。

■心身整える方法、中高生らに語る 出版記念講演

 札幌生まれの精神科医、樺沢紫苑さんは近刊「19歳までに手に入れる7つの武器」(幻冬舎)の出版記念講演会を札幌市内で開いた。

 講演会は6月30日に開催。地元の中高生を無料招待し、保護者らを含め約150人が参加した。近年は10代の平均睡眠時間が短くなる一方、スマホの使用時間は伸び続けており、脳の成長に悪影響をもたらす可能性が高いと指摘。「(心身を)整える力」「コントロール力」など七つの力を身に付ける大切さや、その具体的な方法について語った。


北海道新聞よりシェアしました https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1040490/

しのろ駅前医院

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