2025年1月15日 0:00(1月15日 0:05更新)
新型コロナウイルスの感染者が国内で初めて確認されてから、15日で5年となった。2020年1月に始まった感染の波は、ウイルスの変異とともに繰り返し道内を襲い、今冬もオミクロン株の派生型「JN・1」系統の感染者が増えつつある。治療薬などが普及したが、24年も死者数はインフルエンザの20倍超となっており、高齢者らには特に危険性が高い。コロナ禍の課題を踏まえ、新たな感染症への対応も進んでいる。
厚生労働省の人口動態統計によると、24年8月までに国内の新型コロナによる死者は13万2258人で、このうち道内は7312人。新型コロナは23年5月に感染症法上、行動制限の対象となる「2類」からインフルエンザと同じ「5類」に変更されたが、24年1~8月の死者は2万6302人で同期間のインフルエンザによる死者数1274人の20倍となった。同期間のコロナによる道内の死者数は1147人でこのうち9割が75歳以上だった。
現在も感染者は多く、24年12月30日~1月5日の道内の指定医療機関1カ所あたりの感染者数は11.65人で、全国平均5.32人の2倍超となっている。昨年12月に陽性が判明した道南の30代女性は「軽い喉の痛みと倦怠(けんたい)感はあったが、コロナとは思わなかった」と困惑していた。
5類移行後、市民の感染対策は緩んでいる。厚労省によると、医療機関に納入されたワクチン量は24年12月時点で、インフルエンザの約4700万回分に対し、コロナは724万回分。いずれも高齢者以外は任意接種で、高額な費用や副反応の重さなどから接種しない人が多いとみられる。
厚労省のコロナ専門家組織委員を務めた川崎市健康安全研究所の岡部信彦参与はインフルより重症化率が高いとし「特に高齢者には注意が必要。マスクや手洗いなど、基本的な予防策に加え、ワクチンもなるべく受けてほしい」と訴える。
コロナは感染拡大の初期段階では、発熱などの症状がある患者がかかりつけの医療機関で受診できず、自宅で亡くなる人が出るなど医療体制の不備が露見した。
医療については、各都道府県と医療機関が感染症流行時の医療供給について協定を締結。都道府県や保健所設置市で入院病床数などの数値目標入りの感染症予防計画を策定することとした。また政府は23年9月、司令塔となる「内閣感染症危機管理統括庁」を新設した。
解決が難しい社会的な課題もある。感染拡大当初は、交流サイト(SNS)などで感染者への中傷が相次いだ。早稲田大の田中幹人教授(科学技術社会論)は「未知の感染症が発生したときに、誰が感染したか知りたいと思うのは本能的な反応」とし、同じ事態が起こりうると指摘。「教育や啓発を通じ、誹謗(ひぼう)中傷を許さないという社会的な共通認識を構築することが大切」としている。
北海道新聞よりシェアしました https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1110915/
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