北海道の感染症予防計画、具体的備蓄目標触れず コロナ確認5年 自宅療養支援も盛らず

2025年1月15日 0:00(1月15日 0:05更新)


 新型コロナウイルスの感染者が国内で初めて確認されて5年。国は自治体に対し、発熱外来の医療機関数など数値目標を盛り込んだ感染症予防計画の策定を求めた。だが、北海道が昨年3月にまとめた計画では、一部の備蓄目標や、コロナ禍で逼迫(ひっぱく)した患者移送の改善策に踏み込んでいない。専門家は「コロナ禍の教訓を生かすべきだ」と指摘している。

 計画は国の要請に基づいて策定したもので、2029年度までの6年間が対象。感染症の流行が始まってから3カ月後までの「流行初期」と半年後の「初期以降」の2段階に分けて数値目標を設定した。数値目標は、流行初期がコロナ禍になって1年近く経過した20年12月、初期以降が3年近く経過し全国的なピーク時でもある22年12月の実態を踏まえて決めた。

 発熱外来の医療機関数は「初期以降」で1146機関とし「流行初期」の13倍以上を目指す。入院病床数の流行初期は1734床、初期以降は2448床に設定。PCR検査数は流行初期を1日1290件、初期以降を同9856件とした。

 一方、感染症の予防や治療の際に必要な防護具は、道が協定を締結する医療機関の8割が2カ月分以上を備えるよう求めるものの、具体的な備蓄内容については触れていない。東京都は同様の計画で、2種類のマスクと使い捨てガウン、フェースシールド、使い捨て手袋の5点を定めている。

 道の計画では、自宅療養者向けの支援物資の備蓄についても、確保量の目安や調達、配布の手法は盛り込んでいない。感染者を病院から自宅、宿泊療養施設に移送する際も「消防機関と連携」などの記載にとどめている。道感染症対策課は「国の指針に従って計画を策定し、(入院病床数などの)数値も設定している」と理解を求める。

 道文教大の當瀬規嗣教授(細胞生理学)は「コロナ禍では感染者の移送で救急車が来るのに何時間もかかったケースがあった。民間のタクシーや運送業者と事前に協定を結び、計画に明記すべきだ」と指摘。道が対策を決定するまでに幹部が会議を重ね、時間を要したことから「時々刻々と変化する状況を踏まえ、現場で決断できる役職者も必要だ」としている。

■次の大流行も「コロナ」か 東京農工大・水谷哲也教授

 ウイルスの専門家、東京農工大の水谷哲也教授=北海道大獣医学部卒=にこの5年間の新型コロナの変遷と今後の見通しについて聞いた。

 新型コロナが日本に入ってきた当初、春には収まると思っていた。インフルエンザを代表する呼吸器系のウイルスは主に冬に流行するので、季節を超えて流行が続いたのは想定外だった。一方、弱毒化には10~20年かかると考えていたが、これも想定と違い、オミクロン株の登場によって一気に弱毒化が進んだ。

 新型コロナは人口の6~7割が感染した今、集団免疫で感染が絶たれ、消失する可能性はある。

 次にパンデミック(世界的大流行)を起こすのは感染しやすさからいって同じような呼吸器系の感染症だ。2002年の重症急性呼吸器症候群(SARS)、15年の中東呼吸器症候群(MERS)、新型コロナといずれもコロナウイルスの一種なので、次もコロナと考えるのが妥当だ。コウモリの間で多くのコロナウイルスが蓄積されている。10年に1度の頻度で人間にも感染する新たなウイルスが生まれており、次もそうなる可能性が高い。

 ただ、再びコロナの感染拡大が起きてもウイルスの生成を抑える坑ウイルス薬が開発されているので、その地域に集中的に薬を投与することで早期に押さえ込めるはずだ。mRNAワクチンは効果が持続しない難点があるので緊急的な役割にとどまる。持続性の高いワクチン開発が望まれる。

 コロナ対策を振り返って、デルタ株のような毒性の強い株は重症化するため、病院などに隔離され、それ以上広がりにくい。流行当初の隔離政策は正解だった。マスク着用も流行を抑える意味で効果がある。呼気からのエアロゾル感染なので「3密」を回避するのも感染対策になる。感染が落ち着いた今こそ、国は対策を改めて検証すべきだ。



北海道新聞よりシェアしました  https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1110942/

しのろ駅前医院

篠路駅西口にある内科のクリニックです。地域のかかりつけ医として高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、痛風、気管支喘息などを中心に胃カメラや大腸カメラも対応しています。健診、予防接種や訪問診療もご相談ください。